紅 第６話「貴方の頭上に光が輝くでしょう」

　怪作出現。

　圧巻はやはりミュージカルシーン。
　特にこのぐねぐねと動く気合い入りまくりの作画が猛烈です。

　闇絵と弥生が薄暗く狭い廊下をこちらに向かってうねうね迫ってくる様は、さながらバイオハザード。
　一番腹を抱えて笑ってしまったのは、曲最後の盛り上がり、同じく闇絵と弥生が部屋に乱入してきたカットでの、感極まって腰が砕けてしまう夕乃の動き。

　この演技の凄さはハンパじゃありません。

　勿論、このお話を楽しめるのは、決してフザケているのではなく、大真面目にバカをやる、という姿勢のおかげ。

　歌冒頭、夕乃サイドが歌っている時、そして紫サイドが歌っている時、三流の演出ですと歌っている人がスターだから、と歌っている本人しか映像に捉えません。
　しかし、夕乃の歌を受けている紫の、同じく紫の歌を受けている時の吉野と真九郎のリアクションを撮すことで、そこに映像的なドラマが生まれます。

　そしてまた作画の話に戻りますが、あのぐねぐねとした動きは、非常にレベルの高い動画です。

　普通のアニメですと、原画と動画の違いがわりと目で見て解ってしまうものなのですが、この軟体生物みたいな動きでは、どこからが原画でどこかららが動画なのか、違いが全然解りません。
　もしかしたら、偏執的な作画マンが、一連の動きを全部一人で描いているのかも知れません。

　また、今回とても興味深かったのは、歌の練習シーンで闇絵などが音を外す時の音響。

　昔見たドラマで、確か高橋英樹さんだと思ったのですが、素人劇を演じる、というシチュエーションがあり、その演技が腹から声を出して指先までバシッと決まった演技になってしまっておりました。

　演技が身体に染みついているプロからしてみると、わざと下手に演じる、というのは不可能に近いのです。

　音痴に唄うのも同じ事。意識して音を外そうとすると、とても「不自然な音痴」になってしまいます。

　今は便利な時代になっており、どんな音痴な人でもデジタル技術で音程をピチッと修正する事が出来ます。
　恐らくあのシーンでの音の外し方は、この音程修正技術を使って、ピッチを自然な不安定さにズレさせているものと思われます。

　声色に、ピッチ修正した時独特のフォルマントの気持ち悪さがあるので、まず間違い無いと思います。

　下手な唄を誤魔化す為の後ろ向きな使い方ではなく、この様な前向きな演出に使う事が出来るんだなぁ、と感心してしまいました。

　キャラの性格が微妙に変わってたりとかもしてますが、羽目を外した番外編ですし、結果的に楽しくなっていたので全然問題なし。

　それよりも、「良い想い出になりますよ」という言葉。

　家族のクリスマスパーティーと学園祭が一緒くたになったようなこの楽しさ。
　意識している人は殆どいませんが、みんな紫の為に心の底からこのバカ騒ぎを楽しんでいる。

　とても暖かい、そして大馬鹿野郎な怪作でした。



「オペラ座の怪人」 オリジナル・サウンドトラック