感情的には大きく揺り動かされて良い感じなのですが、地味にしっとりと見せる事に拘ってしまったからか、終始息苦しさが拭えず、観ていると気持ちがどんどん沈み込んでゆきます。
せっかく花火が上がっているので、祭りに出るなどして、そこで二人の対比を見せてもらいたかったものです。でないと、この閉塞感はなかなか辛いものが。
辛いと言えば作画。この様な叙情的な作品にコレは無いんじゃないかと。
銃を向けられたほとりが「悲しそうに笑っている」作画がアレでは、伝わるものも伝わって来ません。
また、二人の記憶に対する対比が散漫で、スズが記憶を植え付けられるアンドロイド、という設定はラストの救いの為にあるだけのような、そんな感じすら受けてしまいます。
タイトルは「ほとり」ですが、視点、主人公はスズであり、しかしそのスズはほとりに出逢ったばかり。ほとりの両親以上にほとりとの想い出が作られている描写もありません。
確かにアンドロイドという、主人公としては見栄えのする設定ではありますが、作品を語れるだけの器がスズにあるか、と言われれば、頭を傾げざるをえません。
スズがほとりに銃を向けるシーンにおいても、あそこまで人間的な感情を持ち合わせたスズなら撃てるはずがない、と視聴者は既に安心してしまいますし、それをやるなら仮にですが、その前にスズの感情的な不完全さを前面に出したエピソードなどを挟んだりして「彼なら本当に撃ってしまうかもしれない」という緊張感を出すべきかと。
とは言え、アイデアやモチーフは素晴らしく、細かいところに気の付くシナリオ。
次作あるとすれば、期待したい所です。