そうは言ったものの、実際に下司もの生活を見るのは初めてなウィリアム。その劣悪な環境に引いてしまいます。
更にアルから聞かされたエマの過去に、自分の置かれている立場を改めて確認する。
ウィリアムを家に招き入れたアルの何気無い仕草が、住んでいる世界の違いというものを解らせてくれます。
ただ今回の過去の描き方に関しては、あまりにはっきり描きすぎで、想像の余地を残しておいてくれないと訴えかけるエネルギーが弱まってしまうかと。
また、話が重くなりすぎない様に配慮された描き方も、これもまた嘘っぽく感じて。
例えば売春宿に幼エマたんを売りつけに行くシーンなど、宿の女将は小さすぎるからと断ります。しかし舞台となっているヴィクトリア時代は少女売春などは日常的なものでありましたし、その恐らく今の時代に配慮しただけだろうあの台詞は、バッサリ切る勇気も必要だったのでは。
また何日も馬車に押し込められて、恐らく糞尿垂れ流し状態だったでのでしょうが、随分綺麗なエマたん、だとか。
コンテであるとかレイアウトであるとか、そーゆー「木」の部分ではなく、広い意味での演出である「森」の描き方が、多少不満が残る所でしたか。
描けない部分はメタファーなどで想像させ、これを描かなければ嘘になる、という部分ははっきりと描く。
無論「エマ」はそんなヴィクトリア時代の暗黒面を描くような作品ではありませんが、今回のようにテーマに直結する部分は、描くか描かないか、ではなく「描き方」に注意していただければ、と思います。