恐らく冒頭の30分だけなので言及は避けますが、TV版と比べ、作り手の年齢的な感性の違いが強く出ていて興味深かった。
TV版はある意味「やんちゃ」な作りで、パッションに溢れ、時代のニーズに応えて観鈴の萌え的な部分もバッチリ押さえてありました。
が、映画版AIRでの観鈴は、表面的にもしっかりとしており、頭の弱そうな描写はことごとく廃してあります。川上さんの演技も、かなり抑えられたものになっていたのも面白かった。
60を超えた監督に萌えを解れというのも無茶な話で、しかし逆に、ある意味枯れた感性を持つ人でないと出来ない解釈で作り上げられていました。
その辺は本編にインサートされる形での SUMMER編で本領を発揮しており、現在の若者と年齢こそ同じくらいではありますが、精神年齢はぐっと上を行っている当時の社会にて、映像美的な部分で強く訴えかけるものがあります。
作画的な部分を見てみますと、浮遊感のある独特な演出もあるにせよ現実的な動きで、ボロボロのストリーム映像のせいもあるとは思いますが、一歩引いた冷めた感覚を受けます。
しかし、往人の操る人形の動きはTV版の「人形が自分で動いています」という形ではなく、往人が操っている感じがはっきりと解る動きで、これは面白かった。
一カ所だけ「さぁ、フィールドワーク二日目じゃぁ〜、って言ってみて」というシーンで今風のデフォルメがされており、何事かと思いましたが。
で、さわりだけ見させていただきましたが、出崎作品独特の演劇的な美学が、この原作に当てはまるかどうか。それは作品全部を見てからでないと解らない所でしょう。
DVDの発売を心待ちにしています。