しかし、名作劇場の本来の視聴者である子供たちは、恐らくまだそこまでの知識は無く、「今までボロを着させられてたのが、良い服を貰って良かったなぁ」程度に思っていた筈。
そこに今回はっきりとあの服は喪服だったんだ、と解らせる事で、「あ、これがドラマの面白さなんだ」と気付かせるテクニック。
ある意味、物語というのはこういう風に観るのですよ、と子供達に啓蒙しているシーンでもあり、この辺の丁寧さが実に素晴らしい。
そしてコゼットは母が天に召された事を伝えられます。ここで生きてくるのは、牧師さんに字を教えて貰っていた描写。当然牧師ですので、キリスト教的な道徳や生死感なども一緒に教えていた事でしょう。
だからなかなか切り出せなかったジャン・バルジャンの様子や言葉から、母が死んだ事を悟ったコゼット。
これはジャン・バルジャンにとっても救いでした。まだ幼いコゼットに母が死んだのだと解らせなければならない、それは相当辛い事だったでしょう。
コゼットも、恐らく牧師さんに教えてもらった生死感の教養があったから、母の死を受け入れられたのでは。
宗教というものは様々な側面を持っていますが、人を救ってこその宗教です。
素直に、神様ありがとう、という気にさせてくれるお話。