あさっての方向。 第８話「あさっての方向」

　やべえ、涙腺やべえ。
　Kanonの後にこの追い打ちは反則です。

　それにしても「自然」という大道具を見事に扱いきっております。

　アバン、朝靄の張りつめた空気による、家を出る緊張感。続き頑張りを見せるからだちゃんの奮闘を描く昼間、自分の無力さと諦めを感じる夕暮れ、危険な現実を見せる夜（さりげなく背景に「大人のオモチャ」の看板を配置しておく辺り、凄いと思った）、そして涙の雨。

　この作品、バランスの取り方が非常に巧く、家出というかなりシビアなモチーフを使っているにも関わらず、前半では「くいものやみほちゃん」のオバサンみたいに笑いどころも用意し、何よりからだちゃんの前向きさでまず視聴者をホッとさせ、その後であの回想シーンを持ってくる巧みさ。

　幼いからだちゃんがまた可愛らしく描かれており、パパに抱き上げられたからだちゃんの柔らかそうな膝の裏とか…ゲフンゲフン…いや、そういう萌えとかのレベルを超えた、「この子には幸せになってもらいたい」という愛情が、これを作っているスタッフから伝わってきます。

　愛してくれた両親の死、そして葬式（ビール瓶がリアリティありすぎ）。その間ずっと流れている挿入歌の優しい旋律が涙腺を刺激します。

「は…はじめまして、いよかわからだです
おにいちゃん」

　前に一瞬だけ出たこのカットに、これだけのドラマが内包されていたと解った途端、私の涙腺ヤバい事になってしまいました。

　悪いけど椒子さん、こんな状況だったら誰でもアンタ捨てちゃうよ…。と思わせてしまう猛烈な説得力です。

　悲しく切ないけれど鬱にならない、どんな辛い展開になっても、どこか心の底に暖かさが残る。
　そんなアニメ。

　傑作です。