これはホスト部のシリーズ構成である榎戸洋司さんが同じくシリーズ構成をしていた、「少女革命ウテナ」「忘却の旋律」等にも通ずる所があり、氏の持つ非常に神経質な作風が全面に押し出されている感じがします。
特にウテナなどは奇才、幾原邦彦さんによる容赦ない演出もブースターとなり、トンガリまくった抽象映像ドラマに仕上がっていました。
しかし、このクセの強い暴れ馬の手綱を見事引いているのは、監督の五十嵐卓哉さん。
幾原邦彦さんと同じく佐藤順一(ARIAの監督)さんの元で修行した五十嵐さんは、時に師のサトジュンを越える様な鋭い演出力と同時に、見事なまでのバランス感覚を持っており、今回のようなナイフで切り裂かれる様なギリギリの物語でも、しっかりとエンターテイメントとして作っております。
サトジュンもそうなのですが、ここがこの人の凄いところで、才能があるとつい視聴者に自分の表現力と同じレベルの読解力を押しつけてしまいがちなのですが、あくまで一般視聴者の目線まで降りていって、「エンターテイメント」を提供してくれる、心の広さとでも言いましょうか。
ついうっかり「芸術」に足を踏み込みそうな題材でも、「娯楽」の枠の中で表現してくれる、優しい天才。
私の中で五十嵐卓哉さんは、そんな評価なのです。