侵略！イカ娘 第１２話「戦わなイカ？／ピンチじゃなイカ？／もっとピンチじゃなイカ？」

　よもやイカ娘で涙を流すことになろうとは。

>最終話ではイカ娘がピンチに陥ってしまうシリアス展開？なので

　とかあり、また余計な事をするつもりじゃないだろうなとかビクビクしてたんですが、もう泣かされましたよ。

　Ａパートでは今までの登場人物勢揃いで楽しいビーチバレー。出てはやられて消えというパターンが、イカちゃんへのお別れの挨拶の様。
　Ｂパートでの異変で、ちょっとした互いの読み違いでイカちゃんは海に帰らざるをえなくなってしまい。
　Ｃパートｍｋ２になって帰ってきてからも、明らかに無理をしているイカちゃん。

　私なりの解釈なんですが、これイカちゃんにお赤飯が来たのではないかと。

　人間ですとイカちゃんくらいの年齢になると、男の子はヒゲが生え女の子は生理が始まりと、身体に大きな変化が生まれます。
　その変化は急激すぎて、自分が自分でなくなったように感じたり、自分が嫌になったりします。

　イカちゃんは海の中で一人で色々悩んだ末、「自分は大人になったのだ」と諦めたのでしょう。海の家に帰ってきてからも大人のペルソナを着けて生活します。
　周囲のみんなは状況が何となく分かってはいるものの、デリケートな問題なのでなかなか触れる事が出来ず。

　そんな中、たけるだけが「イカ姉ちゃんはそんなんじゃない！」と叫びます。
　子どものたけるだからこそ許された、禁断の一言です。

　自分の身体は変化してしまったし、自分が着けていたペルソナも偽物だとたけるに見破られ、もうどうして良いのか解らなくなってしまったイカちゃん。
　そこに現れた謎の少女が「自分のやりたい様に」と告げます。

「あなたは一人ぼっちじゃない」という言葉には、二通りに受け取り方があります。
　一つは、人だろうがイカだろうがみんなこうやって大人になっていくんだよ、という意味。
　そしてもう一つは、この少女は過去イカ娘の様な存在だったのかも、という意味。

　いずれにしても、この言葉でイカちゃんは気づいたのではないでしょうか。
　身体が急激に大人に変わっていくからといって、心までそんなに急いで大人になることはないんだと。

　心と身体とのアンバランスさの中で揺れ動くイカちゃんは、栄子を助けるためにもう少し子どものままでいる事を自ら選びます。

「復活でゲソ」と言うイカちゃんの表情は、全然誇らしそうではありません。
　むしろひどくバツが悪そう。
　それは自分がまだ子どもなんだということを自覚したからでしょう。

　そして復活したイカちゃんの触手は以前より強力になり。
　さらに三馬鹿を許してあげるなど、心まで大きく成長しました。

　ＥＤにて海の家の料理を運ぶイカちゃんは、もうＯＰの様に焦ってはいません。清美に新しいお友達を紹介されたりもしています。

　今回の出来事を通して、イカちゃんは自分はまだ子どもだったんだという事に気づきました。
　そしてそれに気づいた瞬間から、人は……いえ、イカは大人への階段を歩み始めるのです。

　良質なジュヴナイルと呼んでも過言ではないでしょう。

　始まった当初はギャグを期待していただけに勝手にがっくりしてしまったりもしましたが、途中からハートフルホームコメディなんだと気づいてからは、楽しめるようになりました。
　謎の少女の存在はありますが基本的には「続きは２期で」みたいな小狡い事はせず、しっかりと完結させていたのも良かった。

　素晴らしいアニメをありがとうございました。

Comments

イカ娘は、心安らぐ作品でした。笑いというより、タナトス的な安息。

原作者やスタッフが意識していたかどうかわかりませんが、イカ娘の白い衣装や、夏の終わりに海（異界）へ戻ってゆく描写、ＥＤの夜の海の寂寥感から、土俗的な死のイメージを感じました。
海からこの世に帰ってきた無垢な魂を、お迎えして慰霊し、夏の終わりとともにあの世へお見送りする。そんな話だったような気がしてなりません。

Posted by ショートカット萌えなんだ at 2010年12月27日 03:10

ショートカット萌えなんだ さん、こんにちは。

　原作者的には、恐らく一発ネタとしてクトゥルフは意識してる気がしますが、それ以外はあまり考えていないでしょう（笑）。

　でも水島努さんの手にかかり、新しい解釈が生まれそうです。

「イカちゃん可愛い」という原作の持ち味を壊すことなく、別の方向性も見出す。
　こういう料理法が出来る演出家は少ないと思います。
　どうしても我を出したくなっちゃいますからね。

Posted by えみりおん at 2010年12月27日 05:01