何から何まで流されるだけの人生。
最後のスピーチを受け売りで終わらせたのも、酷く自虐的でマヤからも呆れられた程。
しかしそこには「駄目な自分はここまで」という区切りとして、最高に駄目な自分を演じたのではないでしょうか。
だからこそショタ文明と鉢合わせしても、さほど取り乱す様子をみせず、あえて彼の頭を撫でて鍵を発動させたのでしょう。
既に文明は腹をくくっていたのです。
カレーを箸で食べるというのは、あの母親に対するほんのささやかな反逆であり。
超能力が消えたのも自然に消えてしまったのではなく、文明の深層心理が積極的に消してしまったのでしょう。
「こんな力が無ければ、僕は好きな星を見に行けたのに」
という。
宇宙人が来襲した時、文明は恐らくそれらに全て気付いていたのでしょう。
無意識の内に封じ込めた超能力を「自らの意思で」解放しました。
彼は自分の人生全てをかけて、歴史を変えようと戦います。
地球を救うとか、マヤを救うとかもあったでしょう。
しかし本当のところ文明は、過去の自分の為に戦ったのです。
「マヤ、俺を…俺を頼んだぞ!」
恐らくこの事件は、未来に飛ばされたマヤパパとマヤの二人の記憶にしか残らなかったのでしょう。
世界を救った文明は、誰にも賞賛されることなく死んでいきました。
しかし、未来の食卓にはカレーが3人ぶん並んでいます。
マヤパパと、マヤと、過去の文明。
あの母親のぶんはありません。切ないですが当然です。
そして彼らは、新しい家族となったのです。
最期の最期で文明は主人公たりえました。
先週の時点でダメダメだったのも、これで腑に落ちたわけです。
正直言って、ここまで完璧にお話を終わらせられるとは思っていませんでした。
というか、私は何を偉そうに語っているのか。
プロを見くびると、おめおめこんな感動をもらってしまう訳で。
私もぜんぜん修行が足りません。
ことシリーズ構成に関しては、ここ10年くらいのアニメの中でもトップレベルだと思います。
素晴らしい作品をありがとうございました。