逆に周囲の酷評を散々聞いた後だったので、視聴ハードルが低めになったこの劇場版は、困った事に楽しめてしまいました。
出崎氏の「この子なんで死ぬの?」という問いは、TV版を見ていて私も同感でした。
だからTV版は父と汐との和解で終わっていたらなぁ、と思っていたのですが、劇場版は本当にそこで終わってしまっていてびっくり。
幻想世界とこちらの世界とのリンクや、街と渚の病気とか、恐らく監督には理解し難い物だったでしょうし、仮にクラナドWikiでも読んでそのロジックが解ったとしても、出崎監督には受け入れられなかったのではなかったか。
あのお歳になると自分を曲げるのは無理でしょうし、曲げちゃったら出崎じゃないよなあ、と思います。
作画レベルに関しては、TV版の二期とどっこい、というのが残念。仮にも劇場版なんですから、もう少し良い動きを見せて欲しかった。
ただ面白かったのはやはりダイナミックな構図で見せる出崎演出。
人と波が同じショットに映っている時に、人の何倍も高い位置に波を配置する等の、現実にはあり得ない、別々の向きからの視点を同じショットに入れる、ある意味ピカソ的な構図はガンバの頃からの出崎レイアウト。
また、初登場の公子が春原を払い落とすシーンでは、あくまでカット割りで見せる職人芸。
これが一期の京アニでしたら、若い力でグリングリンと力業の作画で見せていた所でしょう。
何と言いますか、これは…
「枯れたクラナド」?(笑)。
周囲がボロクソにけなしていたので、つい擁護っぽい描き方になってしまいましたが、TV版一期とコレとを並べて観たとしたら、まあこれは誰が何と言おうとTV版の方に軍配は上がるでしょう。
ただTV版二期の悲しさも相まり、これもそんなに悪いもんじゃないですよ、と言ってみたり。
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