とらドラ！ 第１９話「聖夜祭」

　来ましたねえ、傑作。

　ドラマ的には大きな動きは無く、結局また微妙に歯切れの悪い終わり方ではあったのですが、猛烈な演出力と作画力でゴリ押ししてくれました。

　コンテは監督である長井龍雪さんと、青春物をやらせたら超一流のカサヰケンイチさん。
　待ってましたのお二人です。

　無理して大人になっています、という似合わない服を着た大河と竜児。
　Ｂパート、大河はそれを部屋で脱ぎ捨てると、貧相な身体をだだっ広い部屋に晒します。

　そりゃもう貧相で、痛々しい程な子供の身体を。

　そして同じく「父親」というスーツから大きくふくよかなぬいぐるみサンタさんに着替えた竜児は、大河を抱きしめます。

　幼児をあやすお父さんの様に。

　で、これがまた困った事に、このシーンまで大河が本気でサンタを信じ込んでいる痛い子なのか否かを、はっきりと出さなかったんですね、このアニメ。
　今回、大河とばかちーのデュエットとかも、普通なら準備中に二人がふっと居なくなる、みたいな伏線張ります。でもやってませんでした（よね？）。

　今回大河が顔を埋めていたマフラーが竜児の物らしい事は何となく解るのですが、それもはっきり出さない。

　その他、とにかくこのアニメ、情報を出しません。

　意図的になのか、ミスなのかは解りませんが、このアニメはそういうアニメなんだ、という前提で観ないとダメみたいです。

　この綱渡りみたいな構成上で視聴者を納得させてくれるには、今回の様に強引に押し切ってくれないと無理。

　押し切られましたよ、今回は。

　サンタさんを見て幼稚園児の様にはしゃぐ無邪気な大河の仕草を見て、これは本気で信じていたんだ、と騙され。

　いや、確かに無茶な設定だよなーとか心では思っていましたよ。
　でも大河のはしゃぎっぷりが本当に嬉しそうだったので、「良かったね、大河」とか心の中で頷いている自分がいて。

　で、こうなるともうコイツラに思い入れしまくっちゃって、考察とかレビューとか関係なくなっちゃう訳なんですよね。

　演出の勝ち。

　そして本当の寂しさを知ってしまった大河が、叫び、走り、慟哭します。
　その足の指にまで演技させる演出。

　やがて大河本人に視聴者の心がすっかり入り込んだ後、ゆっくりカメラが退いて行き、その視点がみのりんの物だったと解る一連はもう神業。

　そしてそれらレベルの高い演出要求を見事に映像化した作画の素晴らしさ。

　しかし…大河の竜児への気持ちが「恋」だという決定的な描写はされてないんですよね。
　いつもそばに居てくれた「竜児という人間」が結果的に離れてしまうだろう事に混乱はしたものの、その気持ちが「恋」なのか否かは、大河本人にもこれまた視聴者にも解らない様にしている。

　これが「とらドラ！」。
　ええ、良くも悪くも。

「好き」という感情は、我々が思っている以上に複雑怪奇なシロモノ。

　恋人の好き、親子の好き、親友の好き。

　それら実態が無く訳の解らない「好き」という感情を、必死になって探ろうと、掴もうとしてあがく四人。

　そんな青春の群像劇なんですね。

　あ、メガネ君は既にリタイアかw？