とらドラ！ 第１０話「花火」

　いや、こりゃ凄い。
　前回と今回の２話で「とらドラ！」は私の中で一気に今期ナンバーワンにのし上がりました。

　何が嬉しいってこのアニメ、登場人物がみんな、真剣に恋愛と向き合っているんですね。

　「萌え」というのは、視聴者なりが一方的に愛でる行為を指すのだと思うのですが、「とらドラ！」の登場人物は５人が５人とも手探りで「恋」というものを探し出そうとしている物語。

　そう、このアニメは「萌えアニメ」ではなく、「ラブストーリー」だったんですね。

　初登場の頃はぶっちゃけ嫌な女だと思ったばかちーも、ここに来て一気にその才女ぶりを発揮。
　転校してまだ間もないのに、もうこの５人の人間関係を掌握してしまいました。

　自分に対して厳しい彼女は、同時に他人にも厳しく。
　煮え切らない態度の竜児にカウントダウンの後、あっさり見捨てて外に出てしまう、嫉妬の入り交じった潔さ。

　このシーンで私、ばかちーが大好きになりました。

　と言いますか、みのりん、ばかちー、祐作と、こいつら揃ってカンが良い上に頭も良すぎ。
　結局、自分の心と互いの心にまだ気付けていない竜児と大河の二人を、全員で見守る構図になっております。

　そして今回のハイライト。
　彼らの恋愛に一つの区切りを見せてくれた夜の花火大会。
　名シーンです。

　竜児がばかちーに「俺はお前がいないと寂しいぞ」と語った直後、彼女の心に花火が打ち上がったタイミングの見事さ。
　「自分が寂しいかどうかなんて考えた事も無い」と強がるばかちーの心は、バケツの水の様に揺れ。

　続くみのりんとの会話では、話し始めようとした途端に花火の炎が消えます。

「私も本当に楽しかった」
「カレーもおいしかった」
「私の変な話も笑わないで聞いてくれた」

　みのりんは全て過去形で語ります。

　そして彼女は幽霊に例えられた竜児の想いではなく、今度は本物のＵＦＯを、新しい恋を、夢を探すんだ、と語ります。

　竜児のみのりんへの恋は、ここに幕を閉じたのです。
　そしてそれを勘違いする大河の心の線香花火は、ポトリと落ちて。

　しかし海の向こうにはこの５人を見守るように、満天の花火が拡がるのでした。

　上手すぎ。
　これが演出ですねえ。

　コンテ、演出は誰かと思ったら、青春ものをやらせたら超一流のカサヰケンイチさん。
　いやいやいやいや、恐れ入りました。

　始まった当初こそ、シチュエーション先行のあざとさが鼻についてしまい、正直かなり引いていた私ですが、ここに来て本領発揮です。
　作画も絶好調ですし、凄いアニメになりました。

　さあ、この後どう展開するか。
　楽しみになってきました！

Comments

序盤は「安易なツンデレ釘宮アニメ」と警戒して見ていたのですが、川嶋“ばかちー”亜美ちゃん登場から面白くなり、学園青春ものとして「バンブーブレード」「まなびストレート」クラスの作品になってきました。
５人組の中でも、特に興味深いのは櫛枝“みのりん”です。よくある天然不思議ちゃんではなく、計算された奇人変人行動で周囲を煙にまいていますが、隠された彼女の本心や背景が気になります。

Posted by ショートカット萌えなんだ at 2008年12月06日 15:31

　ショートカット萌えなんだ　さん、こんにちは。

　このアニメ、良い具合に化けましたね。

　ロッカーの中から転がり出たり木刀を振り回したり等の、いかにもなラノベシチュエーションでまず最初に拒否反応を示してしまった私でした。

　あくまで予想ですが、原作者はちゃんとした心理描写が描ける様で、いわゆる「ライトノベル」の持つあざとさ等は本当は好きじゃないのではないか、と感じます。
　上記のラノベシチュとか、あきらかに浮いていますし、こなれてませんからねえ。

　バンブレとまなびとか、並べるのがちょっと大きいかとは思いますが（笑）、でもこの中盤からの路線をキッチリ描いてくれれば、おっしゃる通り傑作になるかと思います。

　楽しみですね。

Posted by えみりおん at 2008年12月07日 18:27